【日本人の遺伝子】一石英一郎著 2018年刊 角川新書

最近の遺伝子解析技術でみた日本人論。データと解析手法などは明確に記述されていないが、興味ある点はいくつかある。人生100年時代の学びでは、昔の課題をフォローすることもしばしば起こる。そんな視点から、FBの友人から頂いた書物を読んでみた。

遺伝子が(漢民族や朝鮮系ではなく)ユダヤ人と非常に近いということ。
中国では、日本の稲の由来地と言われる「長江」流域付近の人種と近いということ。
そして日本人の持つYAP型の塩基配列は世界でも珍しく。アジアでも日本人にしか見られないという。(地中海、中近東、南部イタリアに多いという)

筆者は更に進んで日本や朝鮮半島の神話との対比に踏み込む。P.37-38
そして、日本神話の形式ルーツはギリシャ・ヨーロッパ系に近いという。
(イザナギがイザナミとの約束を破り黄泉の国での姿を見てしまうのと、オルフェウスが、死んだ妻を冥界から連れ戻すときに、振り返って見てはいけないという約束を破って、振り返ってしまうなど)

そして、ヘブライ語と日本語との類似点などが指摘されている。

これら歴史的解析とは別に、現在の日本人の気質も遺伝子でわかるようになってきているようだ。セロトニントランスポーターと呼ばれる遺伝子配列は「おもてなし」に大きく影響するという。日本人は「おもてなし」の得意なSS型が多く、中間のLS型と合わせると98%以上あるという。アジア人でも中国人、韓国人には少ないという。米国人は「おもてなししない」LL型というのが33%程度だという。

この本の記述は、かなりアバウトなところもあるが、最新のデータをもとに、過去からの「課題=日本人の祖先はユダヤ人」のようなものにメスが入ったのは喜ばしい。今後遺伝子編集技術(CRISPR)などの用途開発と合わせて注目すべき分野である。

私は、腸内細菌がこれからの健康を考える上でキーだと思っているが、一石先生はそこにも注目している。これは、世界は猛烈なスピードで動いているが、この著作ではまだ、日韓共同研究のレベルで止まっている。
遺伝子解析という、発展分野の入り口を知る上では手軽に読める著作である。

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