【帝王学「倫理」第四十一講 「磁石」】杉浦重剛著 「倫理」より[YouTube]磁石がないと 広い海を航海できないのと同じように 個人では学問や道徳 国家としては政治や外交に 正しい道に進むための指針が必要で それを毎日着実に実行することが大切

今日は、磁石のお話です。 磁気を持つ鉄は自然界に存在します。 鋼鉄を磁化させて磁石を作ることもできます。
磁石には2つの性質があります。 鉄をくっつけるのと南北を示すことです。 これらが、人類社会に多大な貢献をしてきました。
西洋の歴史研究では、小アジアのマグネシアで鉄片を くっつける鉱石が発見されて、マグネットと 呼ばれることになりました。 その時代ははっきりしませんが、支那では 古くから使われていた記録があります。

黄帝という英雄がいました。 支那を統一して、国を作ろうとしたのですが 蚩尤(しゆう)が命令に従いませんでした。 黄帝は、蚩尤と涿鹿(たくろく)で戦いました。 蚩尤は、霧を雲のように湧き上がらせ 方角がわからないようにしました。 しかし、黄帝は指南車という方角のわかる道具を作り 蚩尤を滅ぼしました。

周の成王の時、南方から越裳氏(えつしょう)が通訳を連れて 成王を訪問し、白い雉子を献上しました。 帰り道、迷ってしまったので成王は指南車を作って 送り届けたと史記にあります。
指南車をどうやって作ったかは良くわかりませんが 磁石を利用していたことは間違いありません。

それから、しばらくは磁石の利用は目立ちませんが アラビア人が航海に使用して12世紀ごろ欧州に伝わりました。 改良された磁石のおかげで、大航海時代となったのです。
15世紀になって、コロンブスのアメリカ発見 ヴァスコダガマのインド航路発見などが行われました。 現在でも航海の必需品です。

さて、人間世界では学問・思想の広がりは 海のように広大です。 例えば、孔子は「仁義」を説いていますし 老子は「無為」楊子は「為我」(いが) 墨子は「兼愛」を、他の諸子百家は それぞれバラバラに主張します。 ですから、学問をする人も何を取り入れるのか 迷ってしまいます。
漢の武帝の時代に、董仲舒という学者がいました。 いろいろ考えて、「孔子の教えが正しいので その他の教えはやめさせるべきだ そうしないと、民が迷うだけだから」と言いました。 これは、言い換えると世の中の迷える人々に 磁石を与えて、正しい方向を示すことなのです。

我が国では孔子の教え、仏教、老子、諸子百家などが 輸入され研究されました。 徳川時代では、孔孟の教えを正しい道として 庶民は迷うことが無かったのと似ています。 しかも、松平定信は寛政年間に「異学の禁止」を 行いました。

明治以降は、西洋の学問芸術が盛んに輸入されて 権利義務、功利、本能主義、社会主義、個人主義 民本主義などが人々の思想に入りました。 これらは、維新前の人々が知らなかったことばかりです。
本能主義と個人主義についてお話ししますと 前者は、人間を動物と同じようにするものですし 後者は、個人の自由を主張して 国家と反対の行動をさせるものです。 前者は道徳上、後者は政治上「不健全」です。
漠然と学問をすると、種々雑多なので どれが正しい道なのかわからず、磁石なしで 大海を航海するようになってしまいます。 ですから、学問の海でも指針が必要になるのです。 それがなくて、邪説を学ぶと、学問が人を 誤らせる毒物になります。
ですから、昔から人を教え導くことを「指南」 といいます。 これは、学問だけでなく、種々の芸術でも行われました。 正しい道を教えてくれる「指南」は重要です。
明治天皇が「教育勅語」を公布して 日本国民が迷っていることに 道徳上の正しい道をお示しになりました 以上、学問上、道徳上、方針を間違えないために 磁石と指南車が必要だというお話しでした

次に、国家にも同じ理屈があります。 国家として、政治体制、国内政治、外交政治を どうすべきかなどの重要事項は 正しい方針を決めてから確立すべきものです。 これが「国の大方針」(国是)です。
王政維新で国家将来の基本方針を定めたのが 「五條御誓文」です。 この方針の元に、50数年過ぎて今日の繁栄があります。

支那では、周公が成王のために「治世の要」を 説かれました。 これは周王朝八百年の政治の方針を示したもので 後世でも重要と考えられています。 現在の世界情勢を見ますと、ユーラシアの諸国は 対立して利害を争って、国際関係が複雑です。 このような時には、外交上の大方針を決めて 一歩一歩着実に進んでゆくことです。
欧州大戦(第一次世界大戦)終結の平和会議は 我が国にとっても、重大ですから しっかり国の方針を立てて、百年の計を誤らせては なりません。 出席する方々は、私心を捨てて、国家のために 行動すべきです。
以上のお話をまとめますと 個人としては、「学問」「道徳」 国家としては、「内政」「外交」 に対して正しい方針を立てることが必要です。 航海で磁石が必要なのと同じです。

人生100年大人の学び

明治の時代に、個人として、学問や道徳に指針が必要ということで、教育勅語が発せられたのは、日本の徳育教育に大きな意味があったということがわかる。インターネット情報の現在、お勧めだけでなく、自分で主題を見つける能力もやはり重要である。

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