米国の対日戦線の取り組みをまとめた、3時間を超える作品。ここで取り上げるのは、米国に来て、この映画を観ることに大きな価値があると思うため。
結論を急ぐと、1930年台に入り、米国は英国と共同で、日本軍の暗号解読に注力する。エニグマを解読したチューリングのいた研究所と一緒に解読する。
その時に、日本の外務省が使っていた暗号入力用「タイプライター」Purpleを入手することで解読に成功。それ以降、真珠湾の攻撃も米国は察知していた。
この部分、割と日本でも議論になっているし、チャーチルの回想録を読んでも、真珠湾の攻撃は知らなかったと書いてある。しかし、どっこい米国は暗号は解読し、山本五十六を撃墜し、南太平洋での戦線展開で日本を追い詰めてゆく。
今年1月、真珠湾の戦艦Arizona Museumを訪れたとき、暗号解析に利用したタイプライターのコピーが展示されていた。敵の機械をまるごと真似ることで、手の内を読み取るという「愚直な」アプローチである。そして、暗号解読の鉄則は「解読されたことを敵に知られないようにする」ことである。
英国はドイツの暗号解読後、それを察知されないよう、商艦への攻撃を黙認したという。特に1940年台に入ってからは、ドイツの暗号エニグマの解読、日本軍の暗号解読いずれも、入力機器を入手して英国が中心となって解読し、情報は米国とシェアしている。
この中で少し驚くのは、1940年代の映像にカラーフィルムが多く使われていた点である。Tokyo、上海、満州など「定点観測」としての映像になっている。ここでも、アーカイブを後日活かそうという米国の発想が見て取れる。
少し横道にそれるが、戦後の天皇の戦争責任については、冷戦の開始と共に追求よりは利用ということに大きくかじを切った。そして、東京裁判でも利用できる人間は無罪で釈放された例が多い。このあたりは、佐野眞一氏の「阿片王」が面白い切り口で追求している。↓
さて、Amazon Prime Videoに戻ると、Our Enemy The Japaneseという短編の映画もある。これは、日本の文化、伝統をまとめたもので天皇を神と思い、相撲や剣術や柔道などの格闘技、歌舞伎や初詣など手際よくまとめている。
1943年制作になっている。敵国日本を映像で米国民に知らせる(多分海兵隊や陸軍などで使われたのではないか)という意味では、いい情報になっている。
我が国の対応は「鬼畜米英」「敵国語を学ぶとは国賊」「虜囚の恥よりは死」ジュネーブ条約における捕虜取扱がわからない将校が多数いた。
ここでも、情報を疎かにし、思い込みで兵士や国民を縛り付けた風潮が見て取れる。事実を直視することがマナビを早め、行動を正しく補正できる。
米国で観ていただきたい映画のご紹介です。