【帝王学「倫理」18「正直」】杉浦重剛著 「倫理」より[YouTube]「正直」が心の根底にあってそれを実行すると 国が豊かになり、平和になります 「正直」は「忖度」の反対語です どんな状況でも「正直」だと神が守ってくれる というお話も歴史事例もあります

以前の講義で「三種の神器」のお話をしましたが 鏡が物事の「正・不正」や「善・悪」を写し出すので これを「知」と喩えました さらに考えてみましたが「正・不正」や「善・悪」の ありのままを鏡に映し出すのは「正直」なのです ですから北畠親房はいいました 鏡は何も持たない 自分の心などをもたずに全てを 映し出すので「正・不正」や「善・悪」が現れる ありのままの姿を浮かび上がらせる力がある これが「正直」の根源です

神功皇后が作られた屏風にこう書いてあります いい種を撒いて田がよければ米はよく取れます 王が賢くて、部下が忠実ならば国は豊かになります おべっかを聞くと嬉しくなって気持ちがいいです 正直な言葉は気持ちを逆撫でしますし聞き入れにくい 正直を本心とすることで神々の助けがえられます 幸・不幸は自分が招くのです これは「正直」の行為が神々の御心と合っているからです 菅原道真の歌があります 心だに誠の道にかないなば いのらずとても神やまもらん 心が誠の道であれば、祈らなくても神は守ってくれます また、諺があります 正直の首(こうべ)に神宿る 正直者の頭には神様が付いています 宇多天皇が醍醐天皇への譲位の時に残された文書に 菅原道真大臣は学問が優れて政治にも通じている そして事実を率直に話す人なので重用しなさい といわれました 宇多天皇は「正直」を尊重されたのです

武家の世になっても、武士道では 一番尊重されたのが「忠直」です たとえば、北条時頼が青砥藤綱を抜擢して 政治をさせたのは「忠直」を重視したからです ある人が時頼と所領を争ったさい、 奉行人たちはその権威をはばかって敗訴としたのを 藤綱は道理を重んじて判断し所領を返し、 その人が謝礼に贈った銭をも返した このような話は一例ですが 時頼や時宗の美談と言われるものは 藤綱の貢献する部分が多かったと言われます さらに時代が降りますと 織田信長の部下の森蘭丸も「正直」でした 森蘭丸は三左衛門の子供で、信長は大変可愛がりました 十六歳で五万石の領地を与えました ある時、信長の刀を預かった時に鞘の刻みを数えました それから後で、信長が取り巻きに 鞘の刻みの数を当てたらこの刀を与える 皆は推測で数を言いましたが 森蘭丸は数えて知っているので言いませんでした 信長はその正直さに打たれ刀を与えました

米国のワシントンは子供の頃、木を切っているうちに 父親が大事にしている木を切ってしまいました 父親がそれを見て、誰が木を切ったのだと大声で聞きました ワシントンは「私が切りました」と言いました すると父親は、しばらく沈黙して涙を流して言いました 「よく言ってくれた。 お前がもし嘘をついたら、私は全ての木を失う ほどの衝撃だ」 この親にしてこの子ありです

シシリー王ダイオニシアスは 詩作は天才と自負しておりました 臣下はその素晴らしさを称えるので王はますます 自負心を高めてゆきました 当時、ヒロネンスという学者がいました 彼だけが王の詩を遠慮なく批判したところ 王は怒って彼を船牢に入れました ヒロネンスは赦されて再び王の宴会に呼ばれました 王はいろいろ詩を披露して批評を求めました ヒロネンスはダメな詩を褒める訳に行かない 王の臣下に「また船牢に入れてくれ」と言った このようにしないと王の間違いが直せないのです

蒙古のチンギスハンがタイチウ部落を攻撃して チエベという人が降伏して来ました ハンは「コイデンに陣を置いたときに山の上から 私の馬の頭を射た者がいる。誰か知っているか?」 チエベは「山の上から射たのは私です。それが罪であれば 殺してください。赦されればお仕えしたいです」 と答えました ハンは「敵は普通は怒りを恐れてそのようには答えない。 お前ははっきりと自分だと言った。信じられる人間だ」 チエベを臣下にし、その人格を信じて昇進させた その結果、チエベを将軍としてロシアまで征服します チンギスハンの武功はチエベのおかげなのです

国民の上に立って政治を行い 人々を任用するときの基準は「正直」です これは、皇室でも幕府でも同じように配慮されました 北条泰時に政治の基本を説いた僧高辨(こうべん)は 「昔の人はいいました 自身が素直であれば影は曲がりません 政治が正しければ国は乱れないのです 正しいということは欲がないのです あなたの心にこれが身についていれば 人はその徳のおかげを享受できるのです」 といいました まず、自分から素直にしてその後 人々を素直にしてゆくべきなのです

昔の賢人たちの言葉は味わい深いです

人生100年大人の学び

歴史的に、正直が国を治める上で重要な要因であるという事例は多い。また、MBAで教えている「囚人のジレンマ」でも正直が長期的に優位に立つという事例もある。神功皇后の言葉にもあるように「おべっかを聞くと心地よい」のであるが上に立つ人は「正直」な言葉を受け止める必要がある。

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