最近、デジタル版での書籍が増えて海外に住む私にはありがたい。WWIIに関しても、かなりの新しい書籍がデジタルで読め、学びが捗っている。
【陸軍731】
は、著者青木冨貴子さんの足で稼いだ情報収集と、731部隊の生き残りの人々からの直接インタビューから成り立つ。今回の著作では、731部隊は国際法に違反する、細菌兵器などの開発に携わり、中国やソ連の政治思想犯などを人体実験としてに使ったとするもので、終戦と同時に施設をほとんど破壊し、記録を償却しているので、十分なデータはない。しかも、部隊長の石井四郎を頂点とする組織は縦割りによって成り立ち、隊員相互の情報交換も禁じられていたため、真相は闇の中。
そして、東京裁判の時には、米国側もGHQ(戦争犯罪人特定)と米国政府の意向(人体実験データ入手)とが噛み合わずに、石井四郎との司法取引で、石井は戦犯からは逃れる。ソ連からの731部隊の人体実験に関する照会があっても、米国はデータ共有を避けた節がある。
731の石井部隊の最大の懸念は「天皇が国際法違反」で裁かれないことであったが、GHQ、米国内、ソ連の駆け引きが相互の騙し合いと米ソ冷戦の様相となり、取り上げられることはなかった。
私は、近代史は最近学び始めているので、情報がデータで検証されているものに安心感を覚える。著者の井上さんは米国在住で、米国政府文書や731隊員の故郷への訪問など、直接情報を収集している。
日本の戦争中の闇の部分に、例証で裏付けをとっている著作
【日本原爆開発秘録】
は、戦前・戦中史の大御所保坂正康氏の、過去の調査を再度深追いした記録である。この著作の本質は、陸軍と海軍がそれぞれ核兵器の開発研究を目指したが、陸軍側の理化学研究所の「仁科芳雄」研究室は核分裂理論の研究を世界レベル発展させており、実用化の視点は薄かった。一方、陸軍側は実用化を目指す体制にはなっていたが、核分裂理論の進歩情報が伝わらずに、原爆開発には動けない状況であった。
この開発体制は、(日本は)原爆などできっこないという発想から取り組まれたため、8月6日の広島の原爆を(核爆弾と)認識できず8月9日の長崎の原爆投下後にようやく原子爆弾と特定した。
我々は、米国のマンハッタン計画が、どれほど巨大なプロジェクトであったかを知っているので、日本が原爆を作れたとは思えないが、開発体制のトップが「研究の継続」を志向していたことを保坂氏は指摘する。
そして、トップが(最先端情報を握ることで)知的独占による組織運営、世界最先端の核化学の研究推進を図ることになったことが指摘されている。
陸軍の研究メンバーの、湯川秀樹、朝永振一郎は後にノーベル物理学賞を受賞しているのだから、目的は達せられたのではあるが。
この著作を取り上げたのは、私の友人の中に「ソ連の核開発は、日本軍が北朝鮮に作った核施設を接収したので完成が早かった」という人がいたからである。
しかし、保坂氏の著作からも、あるいはルーズベルトの周辺のソ連コミンテルンの手先の動きなどを考えると、日本の核技術がソ連に流れたと考えるには無理がある。
コロナ引きこもりで、日本の歴史を太古から近代までおさらいしているが、今までモヤモヤしていたものが、少しづつはっきり見えてくる気分は良いものである。
人生100年大人の学び
米国では過去の文書がしっかり保管されているので、秘密開示になると新しい事実が公開され、従来の通説がひっくり返ることもある。日本の歴史の流れでも、過去の古文書は割と多く残されて、今までの過去の人々の姿が塗り替えられているようだ。周回遅れで日本の歴史を始めた私は、このポジションを活用あるのみだ。