野中郁次郎氏の太平洋戦争に関する著作は重要だと思う。日本軍と米軍を対比しながら見ているから。そして、歴史の振り返りとデータの解析が科学的だから。
まずは、検証 Guadalcanal 「失敗の本質」からガダルカナルの惨状
ガダルカナルは餓島とも呼ばれ、食料もなく(兵器の補給もなく)兵士は飢えと、病と、白兵突撃で死んでいった。
そして、米国側の海兵隊は「ならず者」と言われつつ太平洋戦争の戦線を切り開いてゆきながら体制の確立と、戦果を挙げてゆく。「アメリカ海兵隊」はその成り立ちを描いた著作。チームとして、重要なポイントがまとめられている。
1942年日本軍は、米国のオーストラリアとの補給線を破壊するためにヘンダーソン飛行場を建設中
1942年8月 米軍はそれを察知して、飛行場の破壊と奪取を企てる。
日本軍は、米軍は翌年にならないと攻めてこないと(勝手に)思っていた。それも、海軍、陸軍が上陸するという想定で。
日本軍兵士は、「米兵は、腰抜けばかりで白兵戦になると逃げ出す」と上官から教えられた。そして素直に信じて行動した。結果は、機関銃掃射で全滅である。
米国は、敵地(特に島嶼)での上陸作戦に特化した海兵隊という部隊を作っていた。日本軍から腰抜けと言われる米兵は、武器や食料は必要なだけ確保されていた。そして、上陸後直ちに飛行場を抑え、続いて空からの支援も行われた。
日本軍は、昼間の攻撃では情報共有で米軍に劣勢なため、夜間攻撃をする。しかし、形勢を逆転まではゆかない。そして、最期はバンザイ攻撃になってしまう。
失敗の本質には、陸軍と海軍の不信感(陸軍は補給を確保しなければ戦えないのに)海軍は補給確保のための軍艦を出さない。(海軍は、戦艦は通常戦う間の補給は常に積載しているので、陸上での補給の重要性が認識できなかった)
また、陸軍の補給の概念は、敵から奪う、現地調達というもので、南洋での食料確保の難しさに対する配慮は見られない。
しかも、海軍は、主要戦闘地域はハワイ方面の南太平洋であるとの認識で共同作業はうまく進まなかった。(いずれも大義名分は天皇のため)
結果は大惨敗であるが、ここに数字がある。(著作の数字のまま)
日本軍 32,000人投入
戦死 12,500人
戦傷死 1,900人
戦病死 4,200人
行方不明2,500人
撤退兵 10,000人
戦死はとは別に、病死、行方不明者が7,000人近くいる。米軍は、海兵隊の作戦活動を成功させ、北上を続ける。
ちなみに、野中先生の著作、「アメリカ海兵隊」によると、海兵隊の規律で最優先は「仲間を置いてゆくな」だそうだ。それは、死んだ仲間も含めて。
そして、組織は「自己革新」できる体制になっているという。
それは、すべての起こった事実に向き合い、学ぶことから始まる。
同時に「知的機動力の本質」も組織論的研究として重要である。
野中氏自身が「知的機動力の本質」のはじめにに書いているように、日本は戦後現実を直視しない「非武装中立」という、戦争忌避イデオロギーとポピュリズムの下に、戦争と軍隊の研究を怠ってきた、という。
「失敗の本質」で米国海兵隊の軍事的、組織的成功を深追いするようになった。そこで生まれた著作が「アメリカ海兵隊」「知的機動力の本質」である。
知的連関を追い続けるこの作業こそ、「人生100年時代の大人の学び」そのものである。