【引き裂かれた約束】藤本健二著 金正恩に見込まれた寿司職人が「拉致問題に貢献しようとした」話

この本は、デジタル化して以前から持っていた。今回、北朝鮮と米国との核兵器開発の密約履行に関して、KQEDのニュースを車で聞いていたら「Kenji Fujimoto」という名前が出てきた。日本で北朝鮮に関して一番情報を持っている人間という意味で使われていた。そこで、急遽読んだ。

藤本さんは寿司職人。1982年、平壌で金正日主席に寿司を握ってから北朝鮮政府とのつながりができる。1985年に共産党員となり北朝鮮政府の職員として料理人を務める。1990年代からは金正恩の遊び相手でもあった。そして2001年から日本に戻り、北朝鮮政府の内幕を暴露して、日本でも本を書いている。

彼は、2001年に北朝鮮を出る時「買い付けに行ってきます」という理由で脱出する。当時、平壌に奥さんと2人子供がいた。2011年、金正恩から平壌に来なさいという招待状を受け取る。しかし、彼は北朝鮮の脱出を理由とした「召喚→処刑」と疑う。最後は信用して平壌に向かうのだがここに、当時の民主党野田政権、松原拉致担当大臣が介入する。藤本氏の平壌行きを、1週間遅らせてくれという大臣からの依頼のためである。理由は「大臣からは説明がない」藤本氏は、「命がけで拉致問題を解決する」という野田首相の発言と自分の役割は「首相親書を渡すこと」と信じて、出発を延期する。そして1週間後、再び大臣と会うが、話はなかったこととなる。
彼は、「自分の命と引き換えでも役に立ちたかった」と悔やんだまま平壌で金正恩と再会する。(本の表紙が再会時のハグ)
そして、大歓迎される。

私がこの本から学んだ点は2つ
一つは、北朝鮮政府の高官たちは「豊かな生活」「西欧をよく知っている」のである。金正恩とその妹はスイスに留学しているし、収蔵する世界の銘酒は1万本を超えるという。

二つ目は、日本は外交でもチームワークが悪い。外交は「情報戦」であることは常識であるが、藤本氏の目から見ると、拉致担当大臣は「腰が引けて」「ただオロオロしている」人である。自分のリーダーシップを発揮せず、官僚組織の言いなりにしかなれない人である。(野田氏も松原氏も松下政経塾出身だそうだ)

結論、日本人はチームワークが悪い、それは戦前の太平洋戦争での陸軍・海軍の対立、それをまとめられない内閣。もう少し遡ると明治政府の薩長閥の存在(これは前ブログの「田中角栄の時代」に暖国(薩長)政策の転換を田中角栄が補助金化したことにも表れている。

現在世界は大転換期に入っている。その中で生き残るには「選択の数が多いほどよい」人生100年時代の学びは、その選択を「今」を起点に探り、そして「今」に適用する手段である。学びの欠けた世界観で世の中の事象を捉えても、答えは見つからない。正解は常に修正しながらはじめて獲得できるものだから。

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