昭和史のスペシャリストたちの座談会。
陸軍と海軍それぞれの、歴史的な動きを追う中で何があの破滅的な戦争に、日本を引き込んでいったかを論じている。
1.近代戦は、総力戦であるという認識は軍として持っており、WWIの欧州戦線の調査を行っている。
宇垣一成は、軍の近代化を師団数を減らして行おうとしたが、現状維持派はひたすら、現状の兵員を保持し、強い相手には、手法は昔のママ「短期決戦で決着する(和平に持ち込む)」という論法を使う。
これに関しては、昭和天皇から度々「満州は1ヶ月といいながら4年もかかっている」と指摘を受けながらも、それに答えもせずに、戦いへと突き進む。
そして、「敵の兵力は低く見積もり、日本軍の弱点は”精神力”で補って、敵を圧倒する」という論理でごまかす。これで、犠牲になった兵士は死者の半数以上に及ぶ。
2.長州の集団が陸軍の派閥を形成し、内部での協力関係、意見の採用に大きな影響を与え、視野の狭い判断を持ち込んだ。
3.参謀本部が、統帥権を悪用し、前線に対し司令を出し前線での損害が生じても、前線の部隊長の責任とされ、参謀への譴責はなかった。(辻政信が顕著な例)
4.海軍は海外に駐在した経験のある国際派も多かった。しかし、根底のところは、陸軍とのライバル意識が強く、いかに予算を多く獲得するかという、戦線拡大策にハマった。
これは、イソップの「ウサギとカメ」でのウサギの行動と同じで、ゴールを忘れた行動となった。
5.若手の意見が幅を利かせる構造(下意上達)となり若手の暴走を止める上官が結局いなくなった。
いろいろ、実名が挙げられた座談会なので、これらの人々の姿を浮き彫りにして、現在に活かせるところを学んでゆくことが次の作業だということがわかった。
太平洋戦争の日本軍を、人を追って見るには素晴らしくよくまとまっている。
一度は読みたい書籍である。