【ヴェノナ】ジョン・アール・ヘインズ , ハーヴェイ・クレア (著) 1999年刊, 中西 輝政 , 山添 博史 , 佐々木 太郎 , 金 自成 (訳) 2010年刊 ソ連コミンテルンの米国スパイ活動の暗号通信記録解読書

共産主義に寛容だったルーズベルト政府

1930年代に大恐慌を乗り切るため、米国は国内では経済復興、対外的には反ファシズムを推進していた。1920年代に、米国共産党は正式に発足し1930年代には共産党員は大量に政府中枢に採用された。当時の経済復興政策は、共産主義思想に近い部分(国家主導、分配の平等など)もあり共産党員に関するチェックはほとんどなかった。そして、共産党員はソ連コミンテルン活動の一翼を担い、第二次大戦終了の1945年まで米国政府の情報を暗号でソ連に送っていた。漏洩した情報には、米国原爆開発情報も含まれる。

暗号技術を過信したソ連

ソ連の暗号は強力で、一回使い切りのコード表を採用していた。この暗号解読に関わったのが米国「ヴェロナ」作戦で、1943年から解読に着手し、1980年に解読に成功した。解読のきっかけは、使い切りのはずのコード表を使い回ししたところで手がかりを残し、米国に解読された。それでも、解読に40年近くかかったことになる。

コミンテルンという世界革命思想の中心

ソ連のコミンテルンは、世界共産党革命を目指す。そのために世界中に情報網を巡らせ、活動家を動かす。第二次大戦中のソ連の指導者スターリンの指令の元に活動した。
スターリンとの権力闘争次第では、ソ連内だけでなく、各国の活動家も粛清された。

コミンテルンとKGBの二重のスパイ活動

スパイ活動は、コミンテルン本部とソ連の諜報機関であるKGBによる二面から行われた。米国のOSS(CIAの前身)にもソ連のスパイは潜入した。
米国は、日本、ドイツに対する諜報活動に主力を置いていたため、国内のスパイ活動へはあまり注力していなかった。(ソ連スパイによる、妨害もあった)

極秘原爆開発マンハッタン計画も情報が漏洩

原爆開発マンハッタン計画も情報が漏洩しており、ウラン235原爆(リトルボーイ=広島投下)プルトニウム239原爆(ファットマン、長崎投下)製造の詳細データがソ連にもたらされた。これにより、ソ連の原爆開発は無駄なく実行された。

共産主義は情報網が最重要

「ヴェノナ」文書を読むと、コミンテルンがあらゆる手立てを駆使して情報を入手する姿が浮かび上がる。そして暗号技術も駆使している。たぶん、当時のスパイの流れは、まだ米国内にも残っていると思うのは私だけだろうか?

暗号解読は1980年に終了したが、実際に公開されて、共産党員の追放に使われるにはソ連の崩壊後である1995年までかかる。
政治が、複雑な要素の上に成り立つことがわかる。

新しい情報は過去の解釈を変える

「ヴェノナ」文書は、解読した暗号の解説書である。
今まで言われてきたことの裏付けや、反証の説明である。
新事実が出てきて、歴史は変わる一つの例である。
継続して学ぶことの大切さがよくわかる。
私のように、昭和も生きた人間にとって、人生100年大人の学びにふさわしい書物であった。

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